社長兼編集長です。
何度か新聞の創刊に関わってきているが、その中で最初の関門になるのが「試作版」の制作だ。案の定、今回も同じ壁にぶつかっている。
自動車の開発であれば、最初は「クレイモデル」(粘土細工)から入る。これは走らなくてもいい。もちろん外部に公表することはない。
新聞の試作は取材を伴う。つまり取材先がある。新聞社の最大の資源はこの取材先との信頼関係のネットワークである。多くの場合、「こんな記事になりました」というフィードバックが取材先との関係構築のためにかなり重要な意味を持つ。新聞の試作版は公表できるものにしなければならない。
ところが、販売政策上は、最初に出る試作版が媒体イメージ、ひいてはその後の売れ行きを大きく左右する。「最初の試作版は事実上の創刊号」という言い方もあるほどだ。報道媒体としてだけでなく、商品としてのレベルも完璧でなければならない。
しかも、創刊前の段階では大量の人員を投入することはできない。人数が多ければ船は岡に乗り上げる。
かくて、作っては壊し、壊しては作り――といった作業を少人数で延々と続けることになる。もちろん、気負いは禁物である。
再創刊を待っていただいている読者のみなさんには申し訳ないが、今少しお時間をいただきたい。きっと満足してもらえる試作版をお見せしますので。